斯界の意見 Opinions

Opinions

平成17年7月7日

 「エネルギー・環境戦略協議会」について

{趣旨}
  日本学術会議第5部会員有志と(社)日本工学アカデミー(内閣府所管)有志は協力して京都議定書策定の2002年初頭から、石油(化石燃料)の有限性とその消費拡大に伴う「石油ピーク」の到来を予見し、それに伴うエネルギー・地球環境・食糧供給など相互関連を示しつつ、想定される諸問題の提起を内閣府を始め、行政・産業界・政界などに行うと共に、国民への啓蒙を行なって参りました。
 平成17年4月より日本学術会議は改正法に則り内閣府所管となり総合科学技術会議(トップダウン型)と並立して、科学者の視点に立って、総合戦略策定の根幹となる長期展望などを勧告・提起する機関とし位置づけられ、本年10月より新生第20期としての活動が期待されております。
 本課題は、地球レベルの科学から全世界各地域の国民生活に及ぶ多様な内容を包含しており、政治・経済・通商等国家間の連携の在り方への対応も必要とされます。
 (財)日本学術協力財団(内閣府所管)は、大きな社会的変化を踏まえ、将来的な展望に立つ事業の促進を図るため、日本学術会議及び学協会との連携強化を機関決定いたしております。その一環として、日本学術会議の活動と連携しつつ(社)日本工学アカデミー及び関連学協会等と連携を密にし夫々の機関の諸活動を国家・国民的戦略としての包括的視点から支援し、国民・産・学・官・政間の円滑な情報交換及び浸透を図る為「エネルギー・環境戦略協議会」を設置して対応する事と致しました。
{発起人}
代表:  近藤次郎   (財)日本学術協力財団会長(元日本学術会議会長・元中央環境審議会会長)
     岸 輝雄   日本学術会議副会長
     西沢 潤一  (社)日本工学アカデミー会長(元日本学術会議会員)
     佐々木 元  (社)日本工学会会長(日本電気(株)代表取締役会長)
     利谷 信義  (財)日本学術協力財団理事長(元日本学術会議副会長)
     三井 恒夫  (社)日本工学アカデミー副会長(元日本学術会議会員)
     秋元 勇巳  三菱マテリアル(株)相談役(日本経団連資源・エネルギー対策委員長)
     池田 冨士太 (株)科学新聞社社長(理・工・農・医学会連絡協議会コーデイネーター)
     石井 吉徳  東京大学名誉教授(元国立環境研究所長、元日本学術会議会員)
     内田 盛也  (社)日本工学会顧問(元日本学術会議会員)
     金岡 祐一  北海道大学名誉教授(元日本学術会議会員)
     川村 皓章  (社)日本善行会会長(元総理府総務副長官)
     田中 宏樹  (財)日本学術協力財団常務理事(元総務庁統計局長)
{事務局}(財)日本学術協力財団に設置
      事務協力 (社)日本工学アカデミー、(社)日本工学会事務局
{活動計画}
  (1)日本学術会議研究連絡委員会、専門委員会及び日本工学アカデミー、関連学会活動の情報交換
     並びにそれらの包括的戦略立案の世話。
  (2)行政府・立法府・産業界関係者と学術からの問題提起についての自由討議、意見交換。
  (3)公益性の高い戦略的事業を諸団体と共同連携しつつ企画・立案を行う。
本活動は、各諸団体の活動を制約する事はなく、問題提起と包括的戦略立案への世話に徹するものとする。
{運営}
   円滑な活動を行うために、運営委員会を置き、協議会会員の数名が担当し、
   事務局と共に運営の企画立案に当たる。会の運営は原則としてボランテイア精神に依存するものとする。
運営委員会構成
委員長  石井吉徳 (会長代行)
委員   田中宏樹 (財)日本学術協力財団常務理事
      川村皓章              理事
      内田盛也              理事
      隈部英一 (社)日本工学アカデミー専務理事
      芦田譲              環境・エネルギー部会長
      池田冨士太 理・工・農・医学協会連絡協議会 コーデイネーター
      三浦宏一 (社)先端技術産業調査会理事長
      柳川隆之 (社)日本工学会事務局長 及び事務局員

平成16年12月24日

『オイルピーク』が来た
EAGEパリ2004報告
今後の採油量は下降線
エネルギ−レビュー2004年11月号

応用地質株式会社 相談役  大 矢 暁

 今年六月七日から十九日までヨーロッパ地球科学者・技術者会議(EAGE)がパリで開催された。この会議は毎年ヨーロッパ各国の都市で開かれるが、パリで開かれたのは十二年ぶりである。今回のEAGEには「Sharing the Earth」というタイトルがつけられ、石油エネルギーが有限な資源であること、過去十年間に中国やインドの予想をはるかに越える急速な経済成長とエネルギー需要の増加によって、既に世界の石油生産供給可能量は世界のエネルギー需要を満たすのがやっとという状況になり、今後は既開発油田の老朽化による生産量の減退と需要の更なる増加から、石油の需給関係が逆転する、まさにオイルピークに達した年になったこと、将来は世界的に重要なエネルギー源としての石油が不足するという未知の時代に入ることが強調された画期的な会議になった。エネルギ−レビュー2004年11月号

平成16年1月4日

平成15年12月25日 内閣総理大臣 小泉 純一郎 様

「豊かな石油時代が終わる」: Nature誌も警告

(社)日本工学アカデミー 環境フォーラム 代表
東京大学名誉教授  石井 吉徳*
http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/oil_depletion/nature_oildepletion.html


 石油はやはり有限でした。2010年より前に「石油の減耗:Oil Depletion」が顕在化する怖れがあります。これはいわゆる石油枯渇論とは異なり、石油生産量がピークを打つというものです。これを「石油ピーク:Oil Peak」と呼び、世界の石油生産量はピーク後、緩やかに減退に向かうと見られます。翻って、石油発見量のピークは1960年代でした。今では発見量は生産量の4分の1程度まで落ちこみ、世界は40年前のストックを食い潰しているのです。残る頼りは中東ですが、ここでも巨大油田はみな老齢化しています。

 この石油の減耗が最近CNNで報道され識者の関心を集めましたが、先月、英国の科学雑誌Natureまでが、石油と文明に関する特集を出すに至りました。因みに、今でも資源大国であるアメリカのブッシュ大統領は、この石油の減耗をご存知とのことです。一方、中東の石油依存が86%と突出する経済大国日本はこれを認識していません。エネルギーについて最も脆弱な国家がこの状態では将来が危ぶまれます。

 石油は現代農業を支えています。人々は食料エネルギーで生きていると思っていますが、これは間違っており石油を食べているのです。石油は化学原材料でもあります。このように石油は現代社会の生き血なのです。更に、地球温暖化は本質的にエネルギー問題ですが、科学者は温暖化の前に石油が減退すると考えつつあります。

 添付する論文は、石油の減耗に関するNature誌の警告、その他の国際的な論調、動向について整理したものです。今後の国家戦略、政策展開に必須の情報・資料と考えます。

以上

*東京大学名誉教授、元環境庁国立環境研究所長、富山国際大学教授


石油の減耗と現代文明:Nature誌も警告 2003年12月23日 石井吉徳 


 英国の科学雑誌:Natureは”取り尽くされた、低く垂れ下がったリンゴ”に喩えて、安く豊富な石油に浮かぶ現代文明は長続きしないと警告した。一方、その予測にはかなりの幅があるとも述べている。いずれにせよ、地球は有限であるから、石油生産が需要に早晩追いつかなくなるのは自明である。そして石油ピーク(Oil Peak)後、石油の生産は緩やかに減退することになる。これが石油の減耗(Oil Depletion)であるが、これはいわゆる枯渇のことではない。地下にある石油は取り尽くされないのである。「取り出すためのエネルギー」が、「得られるエネルギー」より大きくなり、資源として価値がなくなるからである。これがネットエネルギー、エネルギーの質の問題だが、Nature誌はEROI(Energy Return On Investment)で、その意味を説明している。いま世界各地で油田のEROI値が低下しており、カナダのオイルサンドなどの重質油では、この値は元々低いのである。本論は石油の減耗、石油ピーク問題、そして「豊かな石油文明が終わる」ことを、インターネットURLを用いて説明するものである。

以下省略:本文は下記
「石油の減耗と現代文明:Nature誌も警告」
平成15年10月1日

内閣府:経済財政諮問会議、総合科学技術会議
議長 内閣総理大臣:小泉 純一郎 殿
議員 各位

科学技術連合フォーラム:代表世話人 内田 盛也
http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu

豊かな石油時代が終わる
―新文明戦略のすすめ―


現代は、人類文明史上未踏の歴史的転換期にあることは、御高承のとおりです。科学技術連合フォーラムは、専門知識を預かる者の責任を果たすために、人類と地球そして国民と産業社会が直面する中心的課題を注視し、政治・経済へのインパクトを考慮しつつ科学技術力の適切な発揮によって、直面する国家の危機を回避し、国際社会において名誉ある地位を占めることを願って活動しております。

 我々は、地球誕生以来蓄積された石油の回収可能量の約半分を使い勝手の良いものから消費してしまった現実を、世界の有識者との情報交換をもとに確認いたしました。これによって今世紀前半の早い時期に石油は減退に向かうことを前提にして、半世紀後に世界人口は約九十億人へと約五割増へ移行することと合わせ考えると,人類扶養能力を喪失しつつある地球と、石油文明とも言える二十世紀型の繁栄の終焉が予見されます。この忍び寄る危機に注目することによって、それに対応する科学技術力の発揮と、新しい地球社会への移行に対応する国家戦略を明確にできると考え、情報の収集と分析を行って参りました。この長期的視点からの展望を参考にしていただき、人類と国家の未来を想定した戦略的政策の推進をしていただきたいと存じます。

 平成七年十一月超党派議員立法により、「科学技術基本法」が国会全会一致で可決成立いたしました。私共は、本法制定を当時日本学術会議会員として強力に支援し、合わせて国の科学技術投資に「戦略研究」という概念の導入を日本学術会議として提唱し、採用されるに至っております。併し、それは旧来の各省庁システムの中で政策執行が行われて参りました。

 平成十三年一月、内閣府が設立され、内閣総理大臣が国家指導者としてイニシアティブ発揮できる新行政体制へ移行がなされました。また科学技術基本計画第二期に入り、GDP比約一%の国家安全保障費に匹敵する巨額の国費が科学技術分野へ投入されるようになりました。この政策が、より一層効果的に推進されるため、次の体制整備をされますことも合わせて要請いたします。

(1) 的確な状況認識に基づく、将来の国家像を画き、内閣のリーダーシップ発揮の意志をも合わせて国民へ強力なメッセージを発信されること。そのため、情報蒐集・分析・調査・研究のシステムと集約機能の設置が望まれます。

(2) 国家戦略を政策化し、執行するための科学技術予算配分部局を、各省庁分散の現状から内閣府へ集約し、司令塔として機能させること。

(3) 国家目的の明示と、その課題へ挑戦し目標達成するため、産・学・官を問わず最適、最善の人材、組織、システムの動員をはかること。

 科学と技術は双方向に交流しつつ、スパイラル的に相互関連の繰返しの中で進化するものです。科学技術の「知」と「力」は、単なる道具ではありません。指導者が人類・国民の要請に対する目的と効果を明示することによって、挑戦する人々が意欲を持って取り組み成果が得られるものです。今や科学技術と経済は国家経営の重要な両輪であります。

 経済財政諮問会議と総合科学技術会議とが協力されて、二十一世紀の社会的要請を展望し、希望に満ちた明日のための国家戦略を策定されることを願っております。その明示は、国民がそれぞれの立場において、意欲的に創作開拓へ歩み出す方向を示唆することとなります。また若者は未来からの留学生です。これらを教育へ反映させる配慮も願うものであります。

以 上

本文:内閣府、総理他:「豊かな石油時代が終わる」海洋法条約に関する緊急課題への対応(2003-7-9)平成15年7月9日

内閣総理大臣 小泉純一郎 殿

海洋法条約に関する緊急課題への対応
科学技術連合フォーラム
代表世話人 内田盛也
世話人 石井吉徳

国連が海洋法条約を採択したのは1982年。
これによって海岸線から200カイリ(約370km)の排他的経済水域(EZZ)の外でも、地形的、地質的に地続きで有る事が証明できれば、海岸線から350カイリ(約650km)まで延長される事となった。これは国際的に認知される「新領土」の主張であり、国の総力をあげて優先的に取り組むべき課題と考え、政府の強固な決意による取組みを待望しておりました。以下本文参照

全世界石油生産はピークを超えた(2003-6-27)


内閣総理大臣 小泉純一郎 殿                            

全世界石油生産はピークを超えた
−国際政治戦略との関連―

科学技術連合フォ−ラム
代表世話人 内田盛也
世話人 石井吉徳

2003年5月26−27日 The Association for the Study of Peak Oil (ASPO)主催の国際的Workshopがフランス パリで開催された。
ASPOは、世界石油生産の減少、枯渇とその衝撃に関心のある研究機関と大学連携のネットワークである。またロンドンには、The Oil Depletion Analysis Center (ODAC)がこれら諸問題について検討を行なっており、ASPOとODACは協力して情報を発信している。ハイレベルの専門家、実務家の集団による今回の会合は、一定の経歴と情報交換・討議参加に値する特定の人物に限定されている。石井吉徳教授は、日本から特別参加で招聘され討議に加わった。アジアから唯一人の出席である。基本的認識は「Statement On Global Oil Peak」添付資料の通りである。以下本文参照

脱石油文明戦略策定は国家の急務 (2003-4-17)


平成15年4月17日 (内閣総理大臣他に送付)

脱石油文明戦略策定は国家の急務
―日本の危機への対応―   
科学技術連合フォーラム  
代表世話人 内田盛也
世話人 石井吉徳


1.石油文明の終焉と日本への打撃
科学技術連合フォーラムは「エネルギーの未来と食糧・環境」について、多くの専門家とともに検討し、公開シンポジウムを五度行ない、その結果我が国は極めて危機的状況にあり、長期展望にもとづく国家戦略の策定と具体的対応が必要との結論を得るに至った。
我が国は過去半世紀石油資源に依存して科学技術力によって世界第二位の経済大国となった。今グローバリゼイション進行の新世紀となって21世紀の前半への展望を行なってみると、次ぎの事柄が明白に認められる。

1) 石油はいずれ無くなる。以下本文参照

Revisiting "The Limits to Growth": 2000, M.Simmons (An Energy White Paper; Oct1,2000)(2003-7)


1972年のローマクラブによる”成長の限界”を、改めて20世紀の0終わりに当たって、エネルギーの観点から見直した論文。
優れた史観に立つ、総合的且つ冷静、しかし悲観的な
「The Limits to Energy」、つまり「エネルギー限界論」である。ブッシュのエネルギーアドバイザーであり、ハーバード大学(MBA)出のエネルギービジネスの専門家、M. Simmonsによる必読の論文である。
PDF形式で78ページと長文だが、総合的な視点は今主流の日本のエコノミスト、エネルギー専門家に無い視点である。

DEPLETION AND U.S. ENERGY POLICY (2003-5-25, Uppsala ASPO 1st)

ブッシュ大統領のエネルギーアドバイザー、Matthew R. Simmonsによる見解であり、エネルギー企業専門のインベストメント銀行家として、如何にOil Depletionの深刻さを理解するに至ったかを克明に述べている。石油問題を等閑視する日本、石油がなくとも原子力、メタンハイドレートがあるとするエネルギー楽観主義者、未来は水素社会と述べるが水素を何から作るかを言わない専門家などの必読の文である。

DEPLETION AND U.S. ENERGY POLICY
International Workshop on Oil Depletion
Uppsala, Sweden May 23, 2002
Matthew R. Simmons
President:SIMMONS & COMPANY INTERNATIONAL

I am honored to participate in this unique program and I commend the Swedish government for taking the issue of oil depletion and energy reliability seriously. I also applaud Professor Aleklett and Colin Campbell for assembling some of the worldユs experts to address this topic.

Before discussing how the role of oil and natural gas depletion has already impacted U.S. energy policy, I thought it might be useful to share with you how I first became interested in the topic of depletion and how my learning evolved over the course of the past 15 years.

I am not an oil and gas person. I am an investment banker who accidentally ended up spending the past 30-years engaged in energy-related investment banking. When I was growing up, I assumed that I would one day assume my fatherユs role and run Zionユs Bank in Salt Lake City, Utah, which is now the largest independent commercial bank west of the Mississippi River. Even after I graduated from Harvard Business School, I still considered energy simply as something you put into a gasoline tank.

About 33 years ago, purely by accident, I began my investment-banking career in the energy industry. This happened because I met one of the true visionaries of offshore oil, Lad Handelman, at a merger and acquisition seminar in Palm Springs, California. In March 1969, Laddie would become the modern-day equivalent of the Wright Brothers to offshore oil. I was remarkably lucky!

In May 1974, in the aftermath of the 1973 Arab Embargo, I moved from Boston to Houston to found Simmons & Company, an investment bank that would end up specializing exclusively in the energy field. For the next 20 years, our firmユs exclusive focus was on the oil service and petroleum equipment industry. While the group sounded inconsequential to most energy experts, it included the myriad of companies involved in providing the services and producing the equipment to find oil and gas, install the complex hardware to extract it from the ground and convert it into usable energy.

About eight years ago, our firm began shifting our investment banking focus towards the entire energy field. Today, the firmユs 130 employees are the most specialized energy investment-banking group in the world.

My energy knowledge comes despite ever taking a single course on petroleum geology or petroleum engineering. I am also not a mathematician or an energy economist. But, I do love numbers and numerical analysis. (In fact, I almost decided to stay on the faculty at Harvard Business School and become a teacher.) This love of genuine analysis and a growing passion for how important and little understood energy is, even in Houston, Texas, the energy capital of the U.S., has led me on a life-long learning experience about all aspects of energy Where it comes from, how we convert inert energy into useable energy, why it is used, what drives each form of energy demand and a heavy emphasis on the physical mechanics involved in extracting oil and gas from the ground.

For years, my energy analysis was aimed at merely understanding how the economics of the oil service industry worked and how this operating arm of the oil and gas business is influenced by the broader issues impacting oil and gas. I relied heavily on the conventional wisdom of a relatively small group of energy experts to form my general sense of the macro-energy picture. (I later began to understand that most widely-published energy experts have some knowledge about oil, but know very little about its hydrocarbon twin, natural gas, and even less about electricity, which makes up the other 40% of the total energy picture.)

In 1989, I attended an important energy roundtable that focused on the next 10 years for U.S. oil and gas. The programユs moderator outlined a compilation of statistics from various world-class energy forecasters for the future of oil and gas. The statistics indicated the U.S. rig count would stay at 900 to 1,000 rigs at work. But, the forecasts also assumed that U.S. oil production would slowly rise from about 8.2 million barrels per day to over 10 million by the year 2000.

This was one of the first times I paid close attention to long-term oil supply numbers. I was stunned at what they implied. Being a rig expert, I was aware that the U.S. rig count had fallen on hard times. While having 900 to 1,000 rigs at work was beginning to seem normal, if you took the average rig count from 1946 through 1986, it averaged 2,000 rigs at work.

If the experts were right, and oil production could climb back to the peak levels seen when over 4,000 rigs were メturning to the rightモ, then this might prove that we really never needed so many wells drilled in the first place.以下本文参照2003年3月22日 土曜日

地球の「オイルピーク」に関する声明

著者:Mark Sardella: The Local Energy Assistance Project
Julian Darley: GlobalPublicMedia.com
アドバイザー
:Richard Heinberg: New College of California
Colin Campbell: The Association for The Study of Peak Oil

教育界と科学界のメンバーであり、世界の石油生産のピークの研究に関与している我々は、将来の問題とその影響について、以下の声明を発表します。 

石油は限りある資源です。
石油は地質学的な過去に形成されたもので、世界のより多くの主要な石油地質学者は、回収可能な石油全体の95パーセント以上がこれまでに発見されているとしています。従って、我々は適度な確実性を持って、利用可能な石油のトータル量を知っています。この声明の時点で、我々は回収可能な石油の約半分を既に消費しており、1日当たり約7500万バレルを消費し続けます。1981年以来、我々は発見するよりも速い速度で石油を消費してきており、増え続ける消費と減少する発見の間のギャップは広がり続けています。石油は現在、発見される4倍の速度で消費されており、状況は危機的になっています。

石油は最も重要なエネルギー源です。
石油は現代文明の成長を可能にした燃料であり、工業国は現在全て、異常なまでに石油に依存しています。石油は一次エネルギー全体の40パーセント、輸送エネルギーの90パーセントを供給しています。農業、化学、製薬業、殆どの衣類産業、また他の多くの産業において、更に重要です。石油の物理的、及び化学的な万能性はその高エネルギー密度と相まって、他の既知エネルギー源が十分な、または適切な代用品として役立たないほどのものです。要するに、石油は産業界の生き血なのです。

世界の石油生産は、ピークに達しています。
この問題に関する50年間以上の研究と分析の結果、世界の産油国が石油を生産することができる速度が最大限に達した、または非常に近いレベルに達しているということが現在明らかになっています。これが「オイルピーク」が意味するものです。大きな努力と消費により、現在の石油生産のレベルはおそらくもう数年間維持することができますが、その後の石油生産は変えることができない減少を始めるに違いありません。この減少は我々の物質界を管理する自然の法則が保証する確実なもので、いかなる科学、技術、工学をもそれを防ぐことはできません。限りある資源の消費は有限の努力でしかあり得ず、また、減少の開始を遅らせる試みはより急激でコントロールの効かない減少を保証するだけです。

オイルピークは、世界を不安定にする大きな影響力です。
差し迫った石油生産ピークの前兆は、我々の経済、環境、及び地政学に既に影響を与えています。供給の厳然たる制限は、現在最も微細な混乱にも極端な価格反応を示している石油市場を不安定にします。より高い石油価格は、支出できる収入を減らすと同時に消費者物価を上昇させることにより、経済を傷つけています。環境規制の緩和、よりデリケートな野生生物保護地域での掘削、石炭や核技術への移行を通じて弱まった経済を支える努力は、環境に対する懸念を高めています。また、現在50を越える石油産出国で減少がみられるなか、石油に富んだ中東に置かれた焦点は劇的に鋭くなりました。中東の国々は伝統的に、生産を増加させることで逼迫した石油市場を緩和することができましたが、中東自身がオイルピークに近づくと共に、提供できる緩和が制限され、一時的なものになっています。それにもかかわらず、多くの国々が中東の石油に極度に頼るようになり、この地域における紛争の地政学的利害関係は過去最高レベルに達しています。

解決策はサイエンスに基づいていなければなりません。
熱力学の法則や物理学は、ビジネスや経済学に相反し、この危機を通して我々を導いてくれるに違いありません。公開市場は、様々な代替技術の重大な技術的制限を予知することができないため、重要な資源の枯渇に対処するようには装備されていません。例えば、天然ガスはそれ自体有限の資源で、北アメリカでは既に減少しています。水素はよく万能の方策と言われますが、水素は一次エネルギー源というより、むしろバッテリーのようにエネルギーを運搬するものです。そのため、水素は厳密にはエネルギーを損失するものです。核エネルギーを7倍増加して石油の代替とすれば、重大かつ高額な廃棄物問題が発生するでしょう。太陽、風、地熱、及びバイオマスを含む再生可能なエネルギーは奨励されるべきであり、またそれらの大規模な配備の可能性を評価しなければなりません。既に証明されていてもいなくても、まだ研究所の中にある他の技術をこの問題が決定づける時間枠内や規模で展開させることは非常に困難かもしれません。

我々は、世界の全政府がこの問題に非常に真剣に取り組むよう、呼びかけています。
石油ピークは不可避です。最初の警告はほぼ半世紀前に公になり、石油地質学者たちはそれ以来ますます、世界の石油供給に対する懸念を示してきました。1995年以来、ベテランの地質学者のグループは、徹底的な分析に基づいた非常に特定された警告を発しています。我々は、今その声が聞かれるよう求めます。最初の対応は、消費の決定的な削減、及び世界の油田の大きさの徹底的な再評価を含んでいなければなりません。維持できる将来を作るのに参加できるよう、いずれのコミュニティーもこの問題に関して通告されていなければなりません。

オイルピークは現代文明が直面する最重要の課題です。一丸となって我々の集合的な脆弱を認め、我々の文化や文明の構造をかつて試みたことがない方法で変えるために、動き始める時が来ています。我々は課題の大きさも、行動を起こさなかったことによる結果も、過小評価していません。どうか我々のこの声明を採用され、増加しつつあるこのメンバーの一員として、あらゆるレベルで働きかけて下さい。

訳:志満 直実


Saturday, 22nd March 2003

Statement On Global 'Oil Peak'
Authors
Mark Sardella The Local Energy Assistance
Project:msardella@comcast.net
Julian Darley GlobalPublicMedia.com: julian@globalpublicmedia.com
Advisors
Richard Heinberg
New College of California
Colin Campbell The Association for the Study of Peak Oil


We, the members of the educational and scientific communities involved in the study of the worldwide peak of oil production, offer the following statement on the problem and its implications for our future:

Oil is a finite resource.
Oil was formed in the geological past, and a growing number of the world's leading petroleum geologists agree that more than 95 percent of all recoverable oil has now been found. We therefore know, within a reasonable degree of certainty, the total amount of oil available to us. As of this statement, we have consumed approximately half of the recoverable oil, and we continue to consume about 75 million barrels per day. Since 1981 we have consumed oil faster than we have found it, and the gap between our growing consumption and shrinking discovery continues to widen. Oil is now being consumed four times faster than it is being discovered, and the situation is becoming critical.

Oil is our most important energy source.
Oil is the fuel that enabled the growth of modern civilization, and all industrialized countries now rely on it to an extraordinary extent. Oil provides 40 percent of all primary energy, and 90 percent of our transportation energy. It is furthermore critical to industrial agriculture, the chemical and pharmaceutical industries, much of the clothing industry, and a vast array of others. The physical and chemical versatility of oil, combined with its high energy density, are such that no other known energy source can serve as a full or even adequate substitute. In short, oil is the lifeblood of the industrial world.

Worldwide oil production is peaking.
After more than fifty years of research and analysis on the subject, it is now clear that the rate at which world oil producers can extract oil has reached, or is extremely close to reaching, the maximum level possible. This is what is meant by 'oil peak.' With great effort and expenditure, the current level of oil production can possibly be maintained for a few more years, but beyond that oil production must begin an irrevocable decline. This decline is a certainty, guaranteed by the natural laws that govern our physical world, and nothing in science, technology, or engineering can prevent it. The consumption of a finite resource is simply a finite endeavor, and attempting to delay the onset of decline only ensures a steeper, more uncontrollable decline.

Oil peak is a powerful force of global destabilization.
The foreshocks of the impending oil production peak are already impacting our economies, our environment, and our geopolitics. The inexorable tightening of supply is destabilizing oil markets, which now exhibit extreme price responses to the smallest of disturbances. Higher oil prices are hurting economies by increasing the cost of consumer goods while simultaneously reducing spendable income. Efforts to shore up weakened economies through relaxed environmental regulations, drilling in increasingly sensitive wildlife areas, or shifting to coal and nuclear technologies, are heightening environmental concerns. And with more than fifty oil-producing countries now in decline, focus on the oil-rich Middle East has sharpened dramatically. Countries of the Middle East have traditionally been able to relieve tight oil markets by increasing production, but, as the Middle East nears its own oil peak, any relief it can provide is limited and temporary. Nonetheless, many countries have become heavily reliant on Middle Eastern oil, and the geopolitical stakes of conflicts in this region have risen to all-time highs.

Solutions must be grounded in science.
The laws of thermodynamics and physics, as opposed to business and economics, must guide us through this crisis. Open markets are not equipped to cope with depletion of a critical resource, as they cannot foresee the serious technical limitations of various replacement technologies. Natural gas, for example, is itself a finite resource, and is already in decline in North America. Hydrogen is a commonly cited panacea, but rather than being a primary energy source, hydrogen is only an energy carrier ミ much like a battery. As such, hydrogen is strictly an energy loser. Replacing oil with a sevenfold increase in nuclear energy, would pose a serious and expensive waste problem. Renewable energies including solar, wind, geothermal, and biomass must be encouraged, and their potential for large-scale deployment must be assessed. Other technologies still in the laboratory, either proven or as yet unproven, may be extremely difficult to deploy in the timeframe and scale dictated by this problem.

We call on all governments of the world to address this issue very seriously.
Oil peak is an inevitability. The first warnings were made public nearly half a century ago, and increasingly since that time the community of petroleum geologists has expressed concerns about global oil supplies. Since 1995, a group of veteran geologists has been issuing highly specific warnings based on exhaustive analyses. We now ask that the call be heard. A first response must include decisive cuts in consumption, and a thorough reassessment of the size of the world’s oilfields. Communities everywhere must be apprised of this issue so that they may take part in creating a sustainable future.

Oil peak is the most pivotal challenge facing modern civilization. It is time to come together and acknowledge our collective vulnerability, and begin working to change the structure of our culture and civilization in ways we’ve never attempted before. We do not underestimate the magnitude of the task, nor the consequences of a failure to act. Please join us in adopting this statement, and become part of a growing community working to respond at every level.
(Saturday, 22nd March 2003)
忍び寄る窒素汚染の脅威(2003年-3月)


三春ダムでの調査研究です。農業が水質汚染の源となっているとの詳細な調査です。(大矢 暁(株)応用地質会長 2003-3-26)

日本工学アカデミー「環境フォーラム」第6回通常総会報告 2003年5月13日(内田盛也氏による)


1. 専門知識を預かる者の責任
 21世紀は環境の世紀と言われ、新しい文明の創造が期待されています。そのために自然の正しい理解、人間活動と自然の相互作用の科学的認識が不可欠であります。そして、それらの知識の所有者たる専門家たちが、知識を広く一般の人々に理解しやすいようにしなければなりません。
 P.F.ドラッカーは、「ポスト資本主義社会」の中で、「専門知識を一般知識へと統合できないもものは、教養ではない。文明が存在しうるための条件は、対話の世界を造り出すこと、すなわち相互理解をもたらすことの教養が必要」として、「知識は高度化するほど専門化する。しかも他の専門知識を結合するときに爆発する」と述べています。「環境フォーラム」はこれを意識して結成されました。

2. 地球環境問題取り組みの目的
 地球環境問題は、人類的課題、水(W)、エネルギー(E)、健康(H)、農業(A)、生物多様性(B)と貧困克服に密接な関わりがあります。それらの解決が中心的課題であり、人類の「健康で安全な文化的生活」の保障の達成が目的であります。環境問題取り組みの現状は、問題解決の目的意識よりも、新ビジネスや技術開発を目的とする「手段が目的化する傾向」が見られます。
 「環境フォーラム」は、専門知識を真理、すなわち一般知識への行路とするために、中心的な理論、問題、課題が何かを把握する努力を行っております。これまで6回にわたり専門家の立場からの資料、情報の提供を受け、巾広い角度と視野から意見交換を行い、それにもとづいて更に委員各位が世界の専門家、実務家との「知識」交流を深めて頂き、正確な知識と問題のとらえ方の整理を致しました。

3. 公開シンポジウム「日本の経綸を問う」―環境、エネルギー、食糧―
 平成15年3月17日、学士会館でこれまでの活動の成果として行いました。その趣旨は次の通りです。

「地球環境問題、緊迫する中東情勢を受けて、世界の社会、経済、産業、食糧生産の根底を支えるエネルギー問題への危機意識が世界で認識されつつあります。日本工学アカデミーの「環境フォーラム」では、石油は今のままでは21世紀前半、しかもかなり早い時期にその生産量が減退するとの明確な展望のもとに、全地球的視点から検討を行って参りました。
 石油文明の終焉は、世界各地で様々な紛争、対立を生む不安定要素をはらんでおり、国際政治の在り方まで問われております。これら人類の直面する課題を産、官、学、政、国民一般が共有し、我が国の進むべき道を展望する第一歩として本公開シンポジウムを開催することと致しました。」
以 上
ご参照下さい
<http://www.ietepa.org/index.html> または< http://eaj.or.jp> 2).組織→環境フォーラム
2003年3月17日

公開シンポジウム「日本の経綸を問う」−環境、エネルギー、食料−
日本工学アカデミー 会長(開会挨拶)西澤 潤一


科学技術は人類に苦痛からの癒し、更には生命維持のために貢献して来ました。18世紀末から19世紀初頭にかけてマルサスとエンゲルスの間にあった討論は、当時既に、このような意義付けがなされていたことになります。

産業革命は偉大な「苛酷な労働からの人類の救済で、人類文化史の上のマイルストーンとなったのも当然なのです。しかし、これを破ったのは人間自体の怠惰と享楽が原因であります。自然は暖かく人類を養ってくれていましたが、産業革命を契機としてエネルギー消費が殖え、生活環境の改良によって乳幼児の死亡率が低減した結果、人口が急増し、全消費エネルギーは千倍にもなろうかと思われます。これが炭酸ガスになるのです。

しかるに、人間は自然の恩恵に甘え切ってこの猛烈な化石燃料の消費に注意を払いませんでした。嘗て70%あったとか90%以上とか云われる大気中炭酸ガスを太陽の光のエネルギーを藉りて植物は炭水化物として我が身体として取り込み、取り除かれた酸素は大気中に排出される。大きな羊歯や猛烈な数の珪藻によって、さしもの炭酸ガスも食い盡され、何と僅か0.03%にまで減ってしまったのです。ところが、人間が折角石炭・石油になって動物の生存を可能にしている炭素を燃やすことによって炭酸ガスを大気中に開放してしまったのです。

しかも、その殆んどを占める石油はあと70年で燃し盡してしまうと云われるまでに危険も意識せずに炭酸ガスを放出しつづけてしまったのです。本来なら、大気中の炭酸ガス密度はもっと大巾に増えていなければならなかった。それが殆んど増さないままに今日に至ったのは、何物かが炭酸ガスを吸いとってくれていたと云うことなのです。

此処で警鐘を鳴らしたのが、他にも居られると云う話を聞いていますが、東北大学に居られた山本義一先生で、この説の重要性を直ちに理解して、岩波書店発行の世界に紹介の論文を書かれたのが、つい昨年逝去された阪大経済学部におられた稲田献一先生で、多分昭和34年のことでした。今日、環境問題の元祖とされるレーチェル・カーソンが「沈黙の春」を書いたのが昭和35年ですから、恐るべき創造性であると云えます。

ローマクラブの会場から直接文部省に駆け込まれたと聞きますが、ローマクラブでの環境問題の警鐘を学術審議会で報告されたのは茅陽一東大教授でしたが、昭和の末で、山本・稲田両先生の達見であり、日本に於ける環境問題の先達として、尾瀬沼を守られた大石武一環境庁長官と共に銘記すべきです。

この炭酸ガスは海中に吸収され、海底に沈下しながら、メタンの水化物に変り、海底に大量に沈んでいることが確認され、行方不明だった炭酸ガスの行方が漸く判明したのですが、私がやった大気中の炭酸ガスの密度の経年変化を解析接続法で将来に向かって延長してゆくと動物の致死量4%に到達するのは大凡200年後となりますが、海底のメタン水化物がもう殆んど飽和しているので、入り切らなくなり、次第に海面近くにも濃厚になり一寸した海流や波の工合で海面上に現われ、爆発を起すとか温室効果を強くして増々海面に多く浮上してくると云う繰り返しで、地球上の動物が死滅するのではないかと云うコンピュータシミュレーションがプリンストン大学教授の眞鍋淑夫先生によって発表され、この結果では動物死滅は50年後ということになっております。

つまり長い間、人類の側に立って怠惰や享楽をさえ受け入れてくれていた自然と科学技術は、恐ろしい別の反面を、今我々に示したとも云えるのです。

燃料涸渇の対策として、このメタン水化物を海底から汲み上げ、エネルギーを使おうと云う試みも真剣に取り上げられています。長い間の自然の寛容に慣れて、まだ飽くなき自然の恩恵に甘えてよいものか否か、若し、発生した炭酸ガスが海面に吸収され、恐らく太陽の助けを借りて、メタン水化物となって海底に沈む早さがおそければ、大気中の炭酸ガスの密度の増加は避けられないものとなるでしょう。その時温暖化が進み、海底から下がった飽和溶解度の分だけ浮き上がってくるメタン水化物が大きな患いを起すことになるのではないでしょうか。

今、基本的な過程を把握することなしに、利用に突っ走ることは大きな危険と云わざるを得ません。

我々に殆んど永続的にエネルギーを補給してくれるのは、太陽です。その誘発する風の力や降雨による水の力も、太陽の輝く限り、保証されています。不安定な太陽電池や風力の他に昔から利用した水力こそ最も経済的なエネルギーの取得方法です。農業用と兼用しようとするから巨大な貯水を必要とするのですが、発電専用であれば、段差だけあれば発電は出来るのですから、大きな環境変化を起さずに済みます。この水力だけで、全人類のエネルギー使用は、すべて賄うことが出来ます。

従来、交流送電でしたから30km程度までしか送電は難しかったのですが、私達の作った99%直交変換器で変圧器に入れる交流電力を作り、変圧器も99%効率ですが、出力を交直変換器に入れて直流に直せば、全損失3%で、直流変圧器が出来たのと同じことになりますから、直流1万キロ送電が現在の送電線を再利用して可能と云うことになります。更に太い送電線を敷設すれば、地球全体を蔽う2万キロ送電も実現出来、有無相通ずるばかりでなく、平均化による安定化電源を確保することが出来、世界の炭酸ガスの増加に歯止めがかけられると思います。水素を作って航空機や自動車を動かしたりすることも可能で、此処に人類はエネルギーに纏わる危機を脱することになるのではないでしょうか。

昔、製鉄を行うために用意した土地に成長する樹木を伐採して製鉄を行い、跡地に植林すると云う繰り返しで、自然保護を守りながら鉄を手に入れていたと云うことを教えていただきました。先祖の智慧をも学びながら余りにも奔放になってしまった我々の生活を折角の叡智を活用して見直してゆくところに人類の21世紀、更にその先があるのではないでしょうか。

恵まれた自然の美しさを護りながら、生活を続けて来た我々の先祖の智慧を、更に近代化して、地球の持続可能な発展に資することこそ、我々日本人の一つの義務とも云えるだろうと考えます。

ITもそうですが、エネルギーネットワーク、更に現在展開中のテラヘルツ波を利用した人類と地球の安全を守るセキュリティ・ネットワークの建設は私のライフワークだと思っておりますし、日本の技術者の方々が世界貢献の具体的活動として頂いてよい人類と地球への貢献ではないのでしょうか?
                                                    東京中央ロータリークラブ、平成15年2月20日(木)会場、帝国ホテル

 日本経済再生への展望
内田盛也
モリエイ代表取締役会長

はじめに
  日本経済の見通しがはっきりしません。「経済評論家」は色々なことを言っております。自分達の言う通りに政府はやらないから景気が回復しない。自分の予測が正しかったと言いますが、彼らの言う通りやったら景気が良くなると言う保障もありません。「政治家」は、政権を取るために「今の政策は失敗」と言って自己正当化しますが、それもどこまで信じて良いか判りません。必要な事は、過去半世紀戦後の廃墟の中から世界第二位の経済大国となった歩みと今後向かう半世紀後とは全く異なるということです。正に断絶の時代という認識が必要です。

1. 20世紀の繁栄は石油文明によるものです。
 20世紀初頭からエネルギー消費の伸びとGNPの伸びとが平行線を辿って急激な経済成長をしました。
広大な国土を持つアメリカでは無限の資源を背景とした大量生産、そして、国の財政投資と個人の信用創造(借金による消費)とによって大量消費が行なわれ、大量生産・大量消費型経済が出来上がり、その豊かなAmerican life の実現が世界に波及して、世界的高度成長を実現しました。それは安い石油に支えられた経済でした。それが今限界に達しているという事です。
一方、地球環境問題が焦点となって、多量の石油使用や石油から作る諸製品のReduce、Reuse、Recycle が行なわれ始めています。国民の消費を増やせ、そして大量に物を生産という時代では無い。又消費を増やすと、国内で作るのでなく、中国から安いものが入ってくる。生産地は世界の最適地で良い。工業用地、農業用地は需要が減り、土地の価格は下がる。国内だけの閉鎖社会で、経済が成り立つと考え土地を担保にして金を貸していた銀行は不良債権を抱える事になるという悪循環が起こって来た訳です。
 ここでもう少し、長い時間軸と地球社会的次元で考えてみる必要があるのです。

2・石油は今世紀早い時期に無くなる。
 石油文明は終焉する。石油は43年、天然ガスは62年で無くなります。中東は石油の宝庫ですが、サウジアラビアに次ぐ埋蔵量を持つイラクの石油の魅力も、今回のイラク紛争に全く関係無いとは言えません。
 約40年後の石油が無くなる事に向けて、エネルギーの価格は高騰して行きます。石油化学製品も同様でしょう。
 従って今世紀前半は、石油、エネルギーを支配するものが世界の支配権を持つ事になると言っても過言ではないでしょう。「アメリカ」はそれに動いています。ブッシュ大統領の地元テキサス油田はバレル20−25ドルしてないと利益が出ません。「ロシア」は国内に豊富な油田を持ち、イラク油田との権益についてアメリカと取引している様です。また、旧ソ連邦であったカスピ海周辺も油田があります。「フランス」の石油会社もイラク油田権益と関りを持っており、現在のイラクへの武力行使における英米とロ、仏、独の駆け引きを見ていると石油利権と関りのある国益をかけたものである事が見られます。
 これに対して日本は、エネルギー無資源国、近隣の中国、韓国も石油輸入国となり、争奪の紛争も将来懸念されます。日本は石炭も生産を止め輸入、原子力発電も安全点検で電力の安定供給が怪しくなった。東京電力から皆さんのご家庭へ手紙が来ているでしょう。首都圏の電力の45%が   原子力発電に依存している。今年の夏の冷房使用ピーク時には、停電の怖れもあるといっています。
 日本は石油文明の終焉に対して、最も厳しい打撃を受ける状態にあるという認識が必要です。道路公団の借金返済は、50年後と言われていますが50年後に石油は無くなっています。自動車のタイヤの合成ゴムは、C4, C5ですが、石炭から作るにしても日本に石炭は無く、天然ゴムも作っていない。鉄道、海運、自動車などの運輸体系をどうするかも今から考えて計画修正をしていく必要があります。日本は台湾から新幹線建設を受注しましたが、アジア大陸全体へも日本の運輸技術と資本でどう寄与するかを考えて行く時代となっているのです。

3・アメリカ型の経済は日本では成立しない。
 大量生産、大量消費型経済は、アメリカしか成り立たなくなっています。日本の消費者は欲しい「モノ」がない、それは需要の飽和と言う事です。
 セブン・イレブン・ジャパンの鈴木敏文会長は、こう述べています。消費低迷の最大の要因は、不況による購買力の低下ではない。需要を掘り起こす事よりも、米国式経営の模倣で値下げ競争に走ったのが失敗である。景気が悪いから「モノ」が売れないという常識に疑問を投げかけています。そして次ぎの点を指摘して居られます。1991年からの10年間で確かに百貨店・スーパー上位5社の一坪当たりの売上高は7割程度まで落ち込んでいる。しかし1991年からの家計の可処分所得は、98年まで増加している。つまりバブル崩壊後も使える金は増えていたと言う事です。デフレで価格が下落したら、同じ商品は先に買った方が安く買えるから購入を先延ばしするのが普通です。即ち商品のライフサイクルは長くなる筈ですが、商品寿命は逆に短くなっている。売れ筋商品は、売れ始めから3−4ヶ月続いたものが今は1ヶ月、一方価格が高くても高級食材(カニ使用)を使ったおにぎりは2倍の価格でも売れる。価格の高い低いより、新たに気に入った商品を購入すると言う事だと言っておられます。1990年代後半以降は、家計の消費支出が落ちているのは「モノ」で、サービスへの支出はむしろ伸びているのです。

4・米国の生活者構造と日本の生活者構造は全く違っている。
 国民最終消費がGDPの約6割で景気の鍵です。日本は、一人当たりGDP3万2000ドルで米国と並ぶ世界のトップレベルです。日本には、大富豪はいないし又極端に貧しい人も無く高等教育卒業生は1990年45%が2000年には6割強で殆どが教養高い「自己実現・生き甲斐」追求型の消費者がいます。
  米国は、世帯上位1%が全金融資産の65%(実物資産の 19.5%)合計41.8%

         “ 10%  ”   95%( ”    49% ) “ 71.7%

         下位 90%  “   5%( ”    51% )   28.3% です。

 つまり一握りの大富豪と全人口1割の2千数百万人の恵まれた人が良い生活をし、他の90%の貧しい人と言う二極化構造です。皆ローン貸付で販売が為されており、米国では財政バラマキ、低金利の政策が有効なのです。未だ人々に欲しい「モノ」があると言う事です。アメリカの経済政策は日本には当てはまりません。
  日本は世界で最も経済成熟を果たした国家と言う事です。ファッションはヨーロッパの宮廷文化から起こったが大衆が流行を起こす大衆ファッションは、日本の東京が発信と言う事を十数年前から文化女子大学博士課程の生活情報論の中で教えて来ました。ミラノに本社のあるプラダの幹部は、日本人客は、ブランド品を理解するDNAを持っており、高級品の美しさや価値を分かってくれると賞賛している。現にデフレ不況をよそに、世界の高級ブランドの店が東京へ数多く出店し、世界の高級ブランドの数十%も買いつけ又一人当たり購入額も世界で最も高いと言う現実が見られます。

5・経済成熟先進国日本の経済評価をどうとらえるか。
  ハーバード大学名誉教授ジョン・ケネス・ガルブレイス(95歳 ノーベル経済学賞受賞)は、今年に入って私と同じ様な事を言い出して居ります。
  経済進化」の国日本は、統計で現れる生産量、財の所有額、雇用率の数字で評価するのではなく、生活の質、満足感で評価すべきだと言っています。新しい鉄道建設のキロ数や、自動車の台数などは、日本の繁栄を示す重要な指標ではもはや無い。暇になった時間を楽しく使う方が、数字上の所得が減っても良い状況となっている。生きる為の手段の消費は、経済的に安く、時間が節約出来る
「モノ」に行なわれます。自己実現・生き甲斐の為の目的消費は経済的に高くても良い、時間を消費して楽しく過ごす、音楽会、スポーツ、旅行などはそれに当たります。空間的なゆとり:広い部屋、住宅、公園も求めています。、満足感を与える「サービス」を中心に「モノ」をデザイン設計すると言う商品創造の時代です。ホンダの自動車「フィット」は23km/ガソリンLと環境に適合し居住空間に適したデザインを中心にしてそれに機能を満たす様に使われて、ヒットしました。その他の商品も同様な動向を示しています。
  ガルブレイスは、消費者のQuality of lifeの変化に対応した「新しい価値感を創造する事が必要である」として、日本が新しい時代、経済成熟国家と言う経済に経営的に挑戦するのには一番向いている場とまで言っています。

6. 経済のグローバリゼイション進行と日本の頼るべき強み。
  インターナショナルは、政府対政府で夫々の国の官僚がコントロールできる分野です。ところが、グローバリゼイションは経済分野のみ進行して、国の官僚がコントロール不可能な世界基準で動くと言う事です。従って、国は、国防、外交、警察、安全等を除いた経済活動の主役では無くなりました。
 日本の世界の中での強みについて、石原慎太郎東京都知事が、小泉首相のメールマガジンの特別寄稿に書いています。日本の強みは「技術」と「国民の持つ自己資本」の二つです。日本の技術は世界最高です。衣の分野の合成繊維、次世代の炭素繊維、アラミド繊維などは世界を圧しています。食の分野のアミノ酸等醗酵技術は世界最高です。地震に強い土木技術は、日本とアメリカのカリフォルニア州が世界最高です。自動車は、トヨタ一社の株の価格は、自動車王国アメリカのビッグ3を全部合わせたよりも高い。鉄道の新幹線、リニアモーターカー、造船、ロボット、セラミックなど数限り無く日本は優れた技術力を持っています。
  それは、1万2000年前の縄文時代から続いた、日本の古代中国、インド文明から技術の移植、蓄積、伝承、改良、創造の長い歴史の中で培われた特性です。一方国民の持つ貯蓄は、全世界の3分の1と言われています。
  適切な投資を行なうには
(1) 消費者の求める自己実現・生き甲斐へのサービス・商品供給は、机の上だけで仕事をする官僚では駄目で民に任せる事です
(2) 公的投資は、地域の特性ニーズに合わせて、経済学の原点である自然資源の活用と技術の総合力活用、つまり分散型:エネルギー・環境・食料・生活ニーズの地域自立への配分が重要となります。即ち中央から地方へと権限と財源の移行が必要です。
  一方米国は、「強きアメリカ」政策で、海外資本の流入で景気を支えています。
  中国も、海外資本の投資ラッシュで高度成長していますがその許認可の官僚腐敗と環境汚染、国土の38%砂漠化の拡大、沿岸地域と内部の所得格差の拡大と危険信号が見えます。
  経済の目的は国民が、健康で安全な心豊かな文化的生活を営む事であり、日本はまだまだ可能性が高い。そして経済成熟時代到来のパイオニアとして成功の道を開拓する事を願っている訳です。「鍵は技術」それを「個人」「地域」へと活用する分散型対応システムを創出する事にあります。

皆さん、我々が50年前に大学を卒業して、日本再建を目指して、荒廃の国土開拓に挑戦したように、今の若者に日本の誇り頼るべき力を示し、半世紀後の未来像を画き、全世界に雄飛して、自己の人生実現を目指す夢と情熱を与えて頂きたい。これをお願いして私の話を終ります。

参考資料 
1) 内田盛也 「工業所有権による国際技術戦略」 有斐閣(1985年3月30日)
2) 内田盛也 「ニュービジネスと知的所有権」日刊工業新聞社(1988年12月15日)
3) 内田盛也 「選択消費革命」 同文書院 (1990年5月24日)
4) 内田盛也 「テクノポリテイックスー産業技術が政治を動かす」 日刊工業新聞社(1991年4月25日)
5) 内田盛也 「産業のバイオリズム」 裳華房(1994年5月15日)
6) 内田盛也 「知的資本をどう活かすか」 日刊工業新聞社 (2001年5月28日)

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