物理探査学会 2005年10月17日 秋季沖縄学術講演会

日本のPLAN-Bを考える
石井吉徳 富山国際大学

PLAN-B: Japans' Post-Oil Strategies
Yoshinori ISHII
Toyama Univ. of International Studies

The oil price is soaring as a grave consequence of peaking oil, which means the end of 20th century-type civilization. EPR, Energy Profit Ratio is indispensable to make energy strategies for the future Plan-B. The basic items are, 1) understanding oil peak from the view point of risk management and national security, 2) introduction of EPR (Energy Profit Ratio), 3) vulnerability of industrialized agriculture and raw material supply which are deeply dependent on oil, 5) society-relocalization for Japan's survival in islands-Japan, 75% mountainous.

はじめに
今の石油価格高騰を一過性と思う人が多いが、それは間違っている。有限地球の有限石油資源が、増え続ける需要に応えられなくなったからである。これは文明の変革期ともいえる構造的なものと考えるべきで、いわゆる「石油ピーク」が顕在化し、石油が支えた「20 世紀型文明」の終焉が近づいたのである。地球の有限性に基づく当然の帰結だが、現代人の多くはその意味、本質を理解出来ないようで、いまも無限成長を望む。そして石油が無くなればタールサンドがカナダにある、ベネズエラにはオリノコタールがある、その量は中東の石油に匹敵するなどと言うのである。更に日本周辺には、メタンハイドレートが天然ガス需要の何百年分もあると考える人もいるが、本当にそうだろうか。そうでは無さそうである。

改めて資源とは:EPRで考える
その理由は単純、資源を「質」でなく「量」のみで考えるからである。エネルギーにおいて、その入出力比、EPR (Energy Profit Ratio) が大切である。宇宙太陽発電などもEPRで眺めれば幻想であると分かる。経済的に採取できそうにない場所、宇宙の話だからである。そこで、今更ながら資源とは、1)濃縮されている、2)大量にある、3)経済的に採取できる場所にある、ものをである。特に濃縮が重要、熱力学第二法則では低エントロピー物質ということになる。かって永久機関論に終止符をうったのも、このエントロピーである。

脱石油戦略:PLAN-B
このよう背景から「脱石油戦略」を整理する。1)「石油ピーク」を国家のリスク管理、安全保障問題として考える、2) エネルギー戦略にはEPR が不可欠、時間軸の視点を忘れないPLAN-Bが急務。3) 石油依存の現代農業から、自然と共存、地産地消への移行、4) 石油が重要な化学原材料、石油ピークは原材料の一大転換期を意味する。石油に過度に依存する集中社会から脱却し、5) 自然と共存する社会を作るには、地方分散が重要である。現代の集中化社会は優れた集中エネルギー源、石油があってのことだからである。もう一つ重要なこと、それは石油が「常温で流体である」ことである。このことが内燃機関を可能とし、20世紀初頭の車社会、ひいては現代の大量生産型社会を育んだ。このような理由から、石油ピークは車、航空機、船舶などの交通機関を先ず直撃する。これに関して水素がある、21世紀のエネルギー源は水素などと思ってはならない。水素は他のエネルギー源から作る二次エネルギーで、問題の本質である一次エネルギー源そのものでないからで、現在問題であるPLAN-Bの中核とはなりえないからである。最後になるが日本人にとって重要なこと、6) 日本は大陸でなく、75% が山岳の島国である、長年当然の様に西欧文明、技術、考え方を手本としてきたが、これらの国々は大陸に位置する。自然と共に生きるPLAN-Bの構築に、欧米は参考となりそうにない。今さらながら日本人は自分で考えるべき時に来ている、のではなかろうか。

おわりに
本年、小泉総理が「脱石油戦略」という言葉を使い、そして「もったいない」という、日本語にしかない奥行き深い標語について語った。これは間接ながら「地球は有限」、浪費を止めよう、と主張されたことになるが、これは一国のトップとして、また行政の長として世界で始めてのことである。PLAN-Bは、これからの重大な国家的な課題だが、国民全てが取り組んで初めて可能となることである。また限られた時間内では語り尽くせないことばかり、足りないところは私のホームページ:
http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/index.htmlをご覧下されば幸いである。

以上

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