時代遅れのケインズ経済理論をただ信じて、1000兆円の借財を積み上げた日本
有限地球で無限成長は出来ない、K.ハバートの警告:変化の3タイプ 
(2006-7)

 変化には3つのタイプがある。
1)貨幣は無限成長できる、人口も今まではそうであった。しかし、2)自然系は限界がある、それには、河川のポテンシャルのように頭打ちになるタイプと、3)資源のようにピークを打つものなど。石油のような地下資源は非再生的だが、森林のように本来再生的であっても、その収奪が早いと実質的に非再生的となるタイプなどである。

 石油ピーク論の創始者、K.ハバートは1929年の経済恐慌から多くを学んだ。貨幣システムが崩壊したのが1929年の恐慌であったが、当時はまだ資源生産量も幾何級数的に増加できたのである。そのためケインズの政府による需要拡大策、大規模な公共投資には意味があった。事実、資本主義経済はケインズ政策によって、しばしば救われた。だがもうそうは行かない、石油ピークが到来すると警告している。

 1990年代の日本、不況対策として大規模な財政支出をした。そして1000兆円に上る借金を国、地方自治体が積み上げた。この投資は間違っていた。来る石油ピーク時代に備えずに、道路、橋を作った。つまり車社会に膨大な税を投入したのである。時代に逆行した。このようなことをやったのは日本のみである。リーダ・指導層の見識の欠如と言わねばならない。

 

 積み上げた借財は膨大だが、彼らはそれを反省するどころか、未だに橋、道路を作ろうとする。国民、庶民の福祉、幸せは犠牲とされ、銀行の利子はただ同然が5年も続いた。これによって庶民からの280兆円が銀行に流れ、企業を潤した、もう一つの国民からの搾取であった。

 その大儀に雇用、仕事があったが、現実には雇用の質は悪化した、リストラ、非常勤、正社員の減少、そして若者のフリーター化である。真面目に働くにもその場所が無いのである。企業ではリストラする経営者は評価され、株は上がる。このようにして、1000兆円の借金、280兆円の庶民の本来受けるべき利子が奪われたのである。
 インド生まれのノーベル経済学の受賞者アマルティア・センの、「どんな経済学者もそれ程賢くなかった、純粋な経済人は事実、社会的には愚者に近い」が思い浮かぶ。このようにして格差は益々増大するのみ、弱肉強食の競争原理社会が到来したが、ここで石油ピークである。今後、国民はどうなるのか。


国家、地方自治体の借財(GDP比)は伸び続け、作った累積1000兆円は、世界でも例が無い

 

1850〜1969年、左図:全エネルギー生産量、右:銑鉄生産量(K. Hubbert 1956, 1974)
1956: Nuclear Energy and Fossil Fuels, American Petroleum Institute
1974: M. King Hubbert on the Nature of Growth, House of Representatives
1929年の経済恐慌の前1910年頃、エネルギー、銑鉄生産量の片側対数プロットは、不連続に折れ異常であった

 経済学者ではない地球物理学者ハバートは、アメリカの全エネルギー消費と銑鉄消費を1850年から1969年まで片側対数プロットし、それらが世界恐慌前の1910年頃、不連続に下方に折れ曲がっていたことを見出した。彼は経済を常に資源論から深く洞察したのである。

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