バイオ燃料の愚:人は食料がないと死ぬ、この当たり前を忘れる人々(2007−9)

バイオ燃料で疲弊した農業振興と言う大義名分は、短期的な救済策としては理解できるが、中長期的には大変な間違いである。人類から食料を奪う話であり、またエネルギー収支からみても、多くは非合理的である。

穀物からのバイオ燃料はやってはいけない。ブラジルのサトウキビからのエタノールのEPRは8程度と高いが、アメリカなどでのコーン、穀物からのEPRは低い、そして土壌、環境破壊を伴うからである。

「水田を油田に」は以前、朝日新聞に掲載された記事である。日本のエリート層、その意味を考えないで、温暖化対策になる、脱石油戦略になるなどと言うようだ。いまではバイオ燃料は流行の先端ともなった感がある。だが、本当にそれでよいのか。

識者、大学、研究者は国民の立場、真に地方の側に立って問題を科学的に考える必要がある。自民大敗を念頭に、地方、庶民、中小企業、社会的弱者の立場で本気で思索すべきなのでは。

単にアメリカでコーン・エタノールが盛ん、それに遅れないようになどでは無邪気過ぎるのでは。企業はお金が儲かればそれでよいが、国民、庶民、世界の普通の人々、そして今も飢える人々にとっては、そうは行かない。

拝金主義はもう止めにしたい、そのようなことに税金を使ってはならない。昔からの教訓、「お金で幸せは買えない」を思い出そう。そこで、

1)「もったいない学会」は10月16日午後、東大の弥生講堂・一条ホールで、シンポジウム 「自動車用燃料をどうするか」を開催。

2)コーネル大学のPimentel,カルフォルニア大学バークレー校のPatzek等の見解を参照されたい。またPatzekには長い論文、 「Thermodynamics of the Corn-Ethanol Biofuel Cycle」がある。


車に食べ物を奪われてはならない:人間は利口なのか馬鹿なのか
(2007-1)

”食料供給をめぐる自動車と人間の争いはすでに始まっている
世界では8億5400万人が慢性的な飢餓状態にあり、栄養も不足している。そのうち2万4000人(大多数は子供)が毎日死んでいる。2015年までに飢餓人口の割合を半減させるという、国連のミレニアム開発目標は、飢えに苦しむ人口が増え続けていることから、進捗が思わしくなく、食料よりも自動車燃料を優先させる状況が展開すると、完全に失敗するかもしれない。

アメリカの輸入石油への依存拡大という、一つの問題を解決しようとして、それよりもはるかに深刻な別の問題を招いている。(一部略)

食料と燃料が対立する問題については、世界はリーダーシップを切実に必要としている。今後に予想される食料と燃料の争奪戦に対処する戦略である。世界の穀物主要生産国及び輸出国であり、エタノールの最大生産国であるアメリカが命運を握っている”

以上、レスター R.ブラウンの警告である
小利口者は大局を見誤る典型か。結局人間は馬鹿のようだ、古代からの文明崩壊史はそう教えている。私は2007年2月衆議院の報告「バイオマスの利用について〜バイオマス由来燃料を中心として」に関して、衆議院調査局から依頼され6000字の意見を述べた。タイトルは「食べ物を車に奪われて良いのか」とした。識者13名の一人であった。

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