石油ピークと現代文明 Nature誌の警告
石井吉徳 2003年12月23日(改訂2004年12月25日:日本の論文、著書を追加
http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/oil_depletion/nature_oildepletion.html

 英国の科学雑誌:Natureは”取り尽くされた、低く垂れ下がったリンゴ”に喩えて、安く豊富な石油に浮かぶ現代文明は長続きしないと警告した。一方、その予測にはかなりの幅があるとも述べている。いずれにせよ、地球は有限であるから、石油生産が需要に早晩追いつかなくなるのは自明である。そして石油ピーク(Oil Peak)後、石油の生産は緩やかに減退することになる。これが石油の減耗(Oil Depletion)であるが、これはいわゆる枯渇のことではない。地下にある石油は取り尽くされないのである。「取り出すためのエネルギー」が、「得られるエネルギー」より大きくなり、資源として価値がなくなるからである。これがネットエネルギー、エネルギーの質の問題だが、Nature誌はEROI(Energy Return On Investment)で、その意味を説明している。いま世界各地で油田のEROI値が低下しており、カナダのオイルサンドなどの重質油では、この値は元々低いのである。これはEPR(Energy Profit Ratio)エネルギー利益率と同じものだが、日本では全く話題にもならない。本論は石油の減耗、石油ピーク問題、そして「豊かな石油文明が終わる」ことを、インターネットURLを用いて説明する。

1. "Nature insight" 特集:hydrocarbon reservoirs
Nature誌(2003年11月20日)は炭化水素に関するInsight特集として、「エネルギーと文明の変遷:Hydrocarbons and the evolution of human culture」他7編の論文を掲載した。最初の総合的なエネルギー文明論は、著者の一人、ボストン大学のC.J. Cleveland教授が仲間にメールしてくれた。下記はその転載である。
1.1. http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/oil_depletion/Oil_and_Culture.pdf

2. 今そこにある日本の危機:エネルギーの未来と食料
「地球は有限」が私の年来の持論である。それに基づいたエネルギー論、環境論は下記ホームページを参照されたい。因みに私は2003年5月、この問題の第一人者Campbellに招かれパリASPO(Association for the study of Peak Oil)第二回会議に出席したが、アジアからただ一人であった。このヨーロッパの小人数の限られた集まりには、石油の専門家のみならず、原子力関係者、銀行家なども出席していた。論点は総合的で、且つ本質的であった。アメリカにも石油減耗を懸念するグループは少数だがある。しかし、日本には私が関係する「科学技術連合フォーラム」「日本工学アカデミー・環境フォーラム」ぐらいである。
2.1. http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/future_asia/future_asia.html
2.2. http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/opinions/21_century.htm
2.3. http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/eaj/eaj_e.f.htm

2.3. ASPO(The Association for the Study of Peak Oil & Gas)などのホームページ
2.3.1. http://www.peakoil.net
2.3.2. http://www.oilcrisis.com

2.4. CNNなどのメディアに、次第に報道され始めた石油減耗(Oil Depletion)、石油ピーク(Oil Peak)
2.4.1. http://edition.cnn.com/2003/WORLD/europe/10/02/global.warming/index.html
2.4.2. http://www.peakoil.net/Newspapers/CopenhagenPost/index.html
2.4.3. http://www.peakoil.net/iwood2003/OGJ/ASPO.html
2.4.4. http://www.postcarbon.org/events/northbay2003/articles.heinberg.php

3. 「石油ピーク」の意味するところは、単にエネルギーに止まらない。食料、合成化学原料など人類生存の根幹を揺るがす問題
今、「石油生産がピークを打ちつつある」と悟れば、社会は本質的な考察が可能となろう。だが、これが至難なのである、特に日本は。それは資源は海外から買えばよい、と考えることに慣れきったからであろうが、もうそんな悠長なことは許されない。最近中東で多発する紛争は、石油を巡る最後の争奪戦の一環なのかもしれない。ちょっと立ち止まって考えれば、「石油ピーク」の重要性に気づく筈である。農業ですら石油無しには成り立たないのである。そして多くの合成化学物質の原料としても欠かせない。石油は現代文明の生き血なのである。更に石油減耗を理解すれば、地球温暖化問題の視点も変わる筈で、対策が全く軌を同じくすることも理解されよう。

3.1. 石油に代わるエネルギー源はまだ無い:減耗する世界各地の石油資源、並びに日本の論文、著書
3.1.1. http://www.oilcrisis.com/laherrere/Petrotech090103.pdf
3.1.2. http://www.peakoil.net/OilGasUK.html
3.1.3. http://www.dieoff.com/synopsis.htm
3.1.4. http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/pdf_files/ohya.pdf 大 矢 暁
3.1.5. http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/pdf_files/energy_review.pdf 石井吉徳
3.1.6. http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/eaj/eaj_pub.htm 著書「豊かな石油時代が終わる」:丸善発売
3.1.7. http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/opinions/ghawar.htm 石井吉徳
3.1.8. http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/opinions/energygakkai.htm 石井吉徳
3.1.9. http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/opinions/illume.html 石井吉徳

3.2. 現代農業は石油付けである:誰が日本を養うのか?
3.2.1. http://www9.ocn.ne.jp/~aslan/fande21j.htm
3.2.2. http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/myenvironmentalism/philosophy/science_news.htm

3.2.3. 現代社会において、食料の生産から消費まで、多種多様の化学物質が使われている:危ない日本の食料
3.2.3.1. http://www.mmjp.or.jp/JOF

3.3. 地球温暖化前に、石油生産が減退する可能性
3.3.1. http://www.newscientist.com/news/print.jsp?id=ns99994216

3.4. IPCCの予測と、石油減退のウプサラ議定書(試案):いずれ来る石油減耗、年率2.5%程度に見合う需要削減に世界が協調
3.4.1. http://www.peakoil.net/Newsletter/NL35/Newsletter35.html
3.4.2. http://www.oilcrisis.com/uppsala/uppsalaProtocol.html

4. アメリカとヨーロッパ、そして日本
脱石油文明には時間軸上の論理が重要である。短期、中期、長期のどの時点を論ずるのか、整理が必要である。先ずいずれ来る石油減耗、石油ピークを社会が正しい認識し、心の準備をすることであろう。その上で天然ガス、石炭、原子力、非在来型エネルギーなどを正しく位置づけ、そのためのインフラ整備をすぐ始めることである。不意を突かれ社会が動揺しないよう、国家戦略を今から策定する必要がある。そして最終的に自然エネルギーに回帰するとすれば、現代文明そのもの今から見直す必要がある。単純に太陽、風車、あるいはそれらから作る水素社会を、と考えてはならない。それは自然エネルギーは拡散しており、「濃縮」していないからである。このような社会では、今まで通りの成長は望めそうにないから、社会全体の減速は不可欠である。話題の宇宙太陽発電、核融合などについても、その蓋然性を真剣に考える必要がある。今後の科学技術の中心課題とはこのようなものとなろう。生物学者A.J.ロトカは「エネルギーが豊富な時、高エネルギー種が栄えるが、エネルギーが乏しい時、低エネルギー種のみ生き残る」と言っている。エネルギー超浪費型のアメリカ、いまだに中世の石造りの町並が残るヨーロッパ、経済大国のそれ行け日本、そして遅れてきた高度成長型、世界の工場を目指す中国など、それぞれ来たる石油減耗時代、どう生きるのだろうか。

4.1. 中東の重要性と石油ピーク:ブッシュ大統領は知っている(エネルギーアドバイザー、M. Simmons)
4.1.1. http://www.simmonsco-intl.com/research.aspx?Type=msspeeches
4.1.2. http://edition.cnn.com/SPECIALS/2003/mideast
4.1.3. http://globalpublicmedia.com/TRANSCRIPTS/index.php?name=MATT%20SIMMONS&origin=/INTERVIEWS/MATT.SIMMONS/index.php&transcript=2003/02/MattSimmons.02-4.2003-02-10

4.2. 突出する日本の中東依存、そしてアジア
4.2.1. http://www.simmonsco-intl.com/Research.aspx?Type=MSSpeechArchives
4.2.2. http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/future_asia/future_asia.html

5. 石油代替えエネルギー、急務のインフラ整備
有限地球で、永遠の物的成長はあり得ない。20世紀の石油文明を見直し、新しいエネルギー基盤を構築する必要に迫られているが、それには先ず、エネルギーを正しく理解をする必要がある。エネルギーにとって最も大切なこと、それは質である。ネットエネルギーである。

5.1. 各種のエネルギー資源、技術論においてネットエネルギーが最も大切である:今後の日本の戦略的な課題
5.1.1. http://www.dieoff.com/page175.htm
5.1.2. http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/oil_depletion/netenergy.html

5.2. 新しい炭化水素社会の構築が必要である:水素が全てではない
5.2.1. http://www.postcarbon.org/events/northbay2003/articles.heinberg.php

5.3. 低密度の自然エネルギー利用、自然との共存には大地、自然が大事である:21世紀は多様な地方の時代
5.3.1. http://ecosocio.tuins.ac.jp/ishii/opinions/kanazawa_industry.html

5.4. メタンハイドレート:薄く分布する固体で資源価値は低く、環境問題もある
5.4.1. http://www.dieoff.com/page225.htm
5.4.2. http://dieoff.com/page192.htm
5.4.3. http://www.nature.com/cgi-taf/DynaPage.taf?file=/nature/journal/v426/n6964/abs/nature02135_fs.html

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