IPCCと温暖化モデル 石油ピークとASPO
2004-12、改定2006-5 2007−11

今は昔、1920年代のロサンゼルスの油田:資源は無限ではない


IPCC・温暖化モデルと石油ピーク論2007−11)

「石油ピーク」がもたらす必然は、1)自ずから石油燃焼からの二酸化炭素は減り、地球温暖化は回避される、2)現代工業化社会は、エネルギー供給の減退にどう対処するか、3)今の石油に頼る、中国をはじめとする第三世界の工業化路線は不可能となる、などである。そして地球温暖化問題はまったく違った国際政治、社会問題と化す。

IPCC climate models depend on controversial IIASA energy models (J.Laherrere2007)

1)IPCC reports 2001 and 2007 are based on 40 energy scenarios (SRES) designed by IIASA on mostly unrealistic grounds (that I described already in an IIASA workshop in 2001 in particular for gas dreaming of methane hydrates). These 40 scenarios for 2100 range from 12 to 66 Gtoe, with an average of 37 Gtoe, meaning that the gap to fill beyond fossil fuels (at 4 Gtoe/a) could be 33 Gtoe !J.Laherrere(ASPO)

2)The temperature rise is a maximum of 0.8゜C in 2100.The sea-level rise is a maximum of 120mm in 2200 Dave Rutledge(Caltech)


石油ピーク、ASPOとは

「石油ピーク:Oil Peak」とは、世界の石油生産はピークを向えつつあり、供給が需要に追いつかなくなる、というものです。そして「石油ピーク」後、石油生産は緩やかに減退するとするのです。これは「石油減耗:Oil Depletion」とも言います。これを世界に訴えているヨーロッパの組織がASPO、The Association for the Study of Peak Oil and Gasです

ASPOはスエーデンのストックホルム西方のUppsala大学に本拠をもち、創始者は石油地質学者であるColin Campbellである。詳細はASPOホームページを参照されたい。

Campbellは現在は英国、アイルランドに住むが、世界各地で長年石油探鉱技術者としての活動し、現在は今述べたUppsala大学の地質学者と石油生産がピークを打つと世界に警告している。これが「Oil Peak, Oil Depletion」であるが、これはいわゆる「石油の枯渇」のことではではない。

これには反論が多く、特に経済学者、新古典派と称される主流のマーケット至上主義は強く反対している。それは資源といえども市場が解決すると考え、限界のない成長至上主義を信じるからである。その教義に限界はない。「マネーは無限」、成長が雇用を生むと考える。しかし現実には国家間、国家内で貧富の差の拡大するばかり、世界各地で紛争は絶えなず、人心も荒むばかりである。

反対の多いASPOは、本来ヨーロッパの思想である。しかし大西洋を越えたアメリカにも、支持者は少なからずいるようである。そのリーダ格がエネルギー投資銀行家、M. Simmonsはブッシュ大統領のエネルギーアドバイザーでもある。ハーバード大学MBA出身、石油の町ヒューストンに住みアメリカのみならず世界を駆けめぐって石油ピークを訴えている。早く世界は危機に備えるべきと主張している。

世界最強の国、アメリカの大統領がオイルピークを知っており、世界エネルギー戦略を立てている。最近の中東、そしてベネズエラにおけるアメリカの行動は、このような視点から見ればその本質が理解されてくる。

更にC. Campbell等は、天然ガスも余り余裕が無いと言っている。事実今アメリカは、天然ガスの急速な減退に悩まされているのである。天然ガスはガス層を移動しやすく、一旦減退はじめると原油と比較にならないほどその減退は早い。

アメリカは、かって1970年に石油ピークを迎え、いま天然ガスのピークを迎えている。そして世界が今石油ピークを経験しつつある。ここで当然だが極めて重要なことがある、それは石油資源は発見されなければ使えない。その世界の石油発見は、ピークは1964年であった。かなり昔である。つまり人類は過去のストックを食い潰しているのが、あまり知られていない現実で、今では発見は生産4分の1程度に過ぎないのである。このように人類にとって最も原理的なことに、市場原理は働かなかった。

今までも日本は「資源は買えばよい」と安易に考えられているようである。そのためか、石油ピークは日本人には特に理解されにくいことのようだが、今更言うが地球資源は有限である。危機感のない日本、もう終わりにしたいものである。日本は画一思考、単一論理に陥りやすい国、皆が同じ考えをして初めて安心する。そのため同じ思考を皆が共有するまで、皆で努力する。この社会の平準化のためには、先ず違った考えを排除しなけれはならない。独創を「異端」として排斥しなければ皆が納得しない。

そして危機感を嫌う社会は、石油ピークのような発想を受け付けない。私が個人で石油ピークを啓蒙しようとするのは、思考の多様性を受け付けないからである。私は「強靱な社会、柔軟で強かな国家」をつくると信じている。

今年5月、私はパリでのASPOの第2回国際会議に、Campbell氏に誘われて出席したが東洋人は私一人であった。そこで欧米の悲観、楽観論、色々な見解を聞いたが、M, Simmonsが私以上に悲観的であったのには非常に驚いた。


政治的な石油埋蔵量

下の表は、上述のヨーロッパの地球科学者などの集まり、ASPO(The Association for the Study of Peak Oil )による、石油産出国OPECなどの埋蔵量である。だが、この数字がある時期から、一挙に倍増、あるいは3倍増している、その後一向に減らない。

本来、このようにいわゆる公表される埋蔵量とは政治的なものであるが、情報戦を知らない日本はそれを科学的と鵜呑みにする。日本の「石油ピーク」についての救いがたい楽観論は、「情報とは」について、このような幼稚さによると見られる。官僚は、公表される国際的なデータの裏を読もうとしない。国民は官僚を通じて流されるものを信じて疑わない。これでは国家としての戦略など形成される筈がないとしか言いようがない。

どうしてかだが、日本のエリートの長年の欧米追従性向によるのであり、国家として自分で考えないからであろう。


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